10月だというのに汗ばむ午後、お香(香道)の席へ。
楽しみにしていた「源氏香」。
源氏香は、まず5種類の香木が各5包、計25包用意される。
これをごちゃ混ぜにして無作為に5包が選び出され、順番に焚かれる。
5包を順に聴いていき、どんな組み合わせになっているかを当てるというもの。
全部同じ香のこともあれば、すべて異なることもある。考えられる組み合わせは52通り。
手元の紙に5つの縦線を引き、同じと思われる香があれば横線でつなぐ。
そして出来上がった図を「源氏香之図」と照らし合わせて、答を出す。
源氏香の図とは、52種類の図それぞれに源氏物語の女性の名が付けられたもの。
「夕顔」「若紫」「花散里」・・・など。ちなみにこの日は「真木柱」が正解。
平安の時代から貴族の教養として育まれてきた遊びだけに、香道は優雅で知的。
そうかぁ、源氏物語くらいキチンと読んでおかなくっちゃと、家に帰って
30年前に買ったまま積んであった「谷崎潤一郎訳源氏物語」全10巻の埃を払う。
安田寅彦や奥村土牛などそうそうたる名の画家が挿絵を描いた貴重本で、
丁寧にハトロン紙がかけられていたおかげで、本体は黄ばみもなく美しい。
仕事や育児に追われて、出来ずにいたこと、忘れていたものを
いまこうして一つ一つ取り出して、楽しんでいく。
重ねた時間も、巡り会った人たちも、すべてが今につながって
樽で熟成したワインのように香るのを感じるこの頃。
それにしても、香木が焚かれるなかで過ごす2時間はアロマセラピー。
疲れも頭痛も治まってしまいます。