農業を営む父は、休むと体の具合が悪くなると言っていた。
働くことは薬だった。いつから働くことが毒になったのか。
皆休みたがっている。日曜日の夕方になるとため息をついている。
少しだけ働いて、たくさんお金をもらいたいと思っている。
働くことは、お金のためとか、そういうことでもあるけれど、
働くことは善いことだった。だましたり盗んだりすることの、
そのいちばん反対側にあるのが働くことだった。
人は働くことで、やっと清められた。
昨日に続き、『百年の食』より一文を抜粋。
田舎道をゆくと、農家のお年寄りが黙々と畑で働いておられる。
土を耕し、その実りを食して命をつなぎ、また働く。
その姿を美しいと感じ、土の匂いに安らぎ、
働くとはどういうことだろうと思い始めた数年前の春。
販売促進という名分のもとに必要ではないものまでつくり出す虚業は、
そろそろおしまいにしなくてはと思い始めたのです。
そしてブランド服とヒールの靴を捨て、生活の空気を変えて1年と少々。
命をつなぐためにほんとうに必要なものを、
へっぴり腰ながら耕しはじめているところです。