映画「おくりびと」を観る。
東京の交響楽団でチェロを弾いていた主人公が失業し、
ひょんなことから故郷で納棺師の職につくというお話。
納棺師とは遺族の目の前で故人の体を清め、死装束を着せ、
美しく化粧を施して棺におさめるという仕事。
一連の所作は儀式的で美しい。
父が亡くなった時は「湯かん」をしてもらったが、
闘病の疲れを温かな湯で拭ってもらい、
おだやかに微笑むような顔で棺におさまった。
ちょうど朝日新聞の朝刊で「家で迎える最期」という記事を読んだばかり。
聴覚は最期まで残る、だから感謝のきもちや別れの言葉をかけて。
手を握るなど肌のぬくもりは死に行くものを安心させ、
最期まで家族とともにいることを確認させると。
大事な人を心残りなく送るために知っておきたいことがある。
「おくりびと」はそれを教えてくれる良い映画だと思う。
葬式は残された人のためにあるのだから。
映画のなかでグノーの「アヴェ・マリア」が流れる。
こころにしみて美しい。