このたびの鎌倉散策の発端は、東京国立博物館の「薬師寺展」に出展の菩薩像。
ひと目観たくて、東京行きの飛行機に乗った次第。
菩薩像とは、白鳳時代の超傑作である日光菩薩と月光菩薩の2体。
普段は、奈良薬師寺金堂で薬師如来の両脇にペアで立っておられる。
それがこの度、光背(背中のオーラの板)をはずされ、如来様を残しての特別出張。
正面からだけでなく背中も、ぐるり360度の角度で観ることが出来るとあって、
テレビや雑誌でも大々的に取り上げられた。
技術が発達した今も、このレベルを超えるものをつくることは不可能といわれる
わが国の仏教文化の至宝。
その移動と運搬にあたっては、日本通運の美術部が1年余りを費やしてプランニング。
テレビカメラが追った、その一部始終も大変興味深かった。
で、間近で仰ぎ観た菩薩様は、優美で、力強く、量感のある肉体が美しかった。
千三百年の歳月、どれだけの人が病気平癒を願って、手を合わせたことか。
「年に2度のお身ぬぐい(掃除)の時、同じ銅でつくられた他の仏像とはまったく違う
金属の冷たさのない、温かみを感じる」とは、薬師寺のお坊様の弁。
ちなみに菩薩とは、悟りをひらいて如来になるために修行をしている者の姿。
悟りをひらく前の釈迦をモデルにしているため、古代インドの貴族の格好をしている。
腰をわずかにひねった姿は、インド舞踊で使われる伝統的なポーズ。