どうですか、この肝の入った笑顔。
瀬戸内海に浮かぶ大崎上島で
昔ながらの製法で醤油を造り続ける
「岡本醤油醸造場」のご主人、岡本さん。
御年72歳にして元気はつらつ、
現役の蔵人にニッポンが世界に誇る麹文化を学びました。
ちょっと長くなりますが、ぜひお読みください。
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かつて讃岐の国の特産品だった塩・砂糖・木綿をさして
「讃岐三白」といいますが、瀬戸内にも、
塩・大豆・小麦をさして「瀬戸の三白」という言葉があるそうです。
そして、これらを原料に花咲いたのが島の醤油造り。
岡本さんが、まず見せてくださったのが、
いま炒ったばかりの小麦。まさにこんがり小麦色。
香ばしい粒をひとつかじったら、これだけで十分においしい。
これを砕いて、蒸し煮した大豆と合わせて室(むろ)に入れ、
湿度と温度を調整しながら麹を作ります。
室の中を見せて頂くと、大豆が生きてます。
小麦と大豆と種麹が不思議の世界で麹へと育っています。
(自然のなせる技、くわしくはまた勉強せねばなりません)
ここでも、大豆を一つつまんで口に入れると「おいしい!」
もう一つ、また一つ。大豆のもつ自然の甘さがたまりません。
容器に入れて持ち帰り、お腹いっぱい食べたかった。
そして出来上がったのが、麹。
しょうゆ造りは、すべて素手で作業。
「だいじなオンナを手袋では触らんでしょう」
昔から、こうした艶っぽいたとえによって
醤油造りのイロハは伝えられてきたと言います。
いいですね。
出来上がった麹は、いよいよ樽に仕込まれます。
塩水と合わせ、毎日かき混ぜ呼吸させながら熟成を待ちます。
もろみとなり、もろみがさらに熟成して醤油となるまでの時は長く、
まさに、これがスローフードなのです。
静まる蔵、ずらりと並ぶ杉樽。
醤油たちのかすかな息が聴こえてくるようです。
杉の大樽で育てる昔ながらの天然醸造法。
ステンレスタンクではかなわない、深みのある味わいが生まれます。
1年物、2年物・・・テイスティングをさせていただきました。
しょうゆが育っていく様を舌で実感、貴重な体験。
樽から樽を軽々と渡り、
嬉々として醤油造りを語る職人岡本さん、
生まれ変わったら職人になりたいと思う私。
惚れちゃいますよ。
いよいよ絞り。火入れ前の生醤油です。
アスパラかなにか、野菜をつけてぱくりとやりたい気分です。
これは絞ったあとの、カス。
と言っても、アミノ酸と食物繊維をたっぷりとふくんでおり、
野菜の肥料になるなど活用の場が待っています。
最後まですべて使い切り、土に戻っていく醤油造り。
その全行程を確かめる、またとない幸運に恵まれました。
岡本さんご夫妻と2人の息子さん、
蔵に出入りするお孫さんたちもすでに醤油の味を知り、
かなり味にはうるさい様子。
野菜の味をしっかり引き出し、いえ
数倍にもおいしくしてくれる醤油の味は安泰のようで、
頼もしいかぎりです。
岡本さん、本当にありがとうございました。
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岡本醤油さんの醤油は、
わたしの本「100万人の幸せごはん」でも紹介しております。
広島市内では本通りの「夢ぶらざ」、広島港隣の「山海ステーション」で
入手できます。
問い合わせ 岡本醤油 08466-5-2041