今年の直木賞受賞者、井上荒野。
女性ながら「荒野(あれの)」は本名で、
父親で作家の故・井上光晴が名付けたといいます。
実妹の名は「切羽(きりは)」。
凛として強い女になれよと願ったか、
どちらもカッコいい名だと思いませんか?
受賞作「切羽へ」は、抑制のきいた大人の恋愛小説。
切羽とはそれ以上先へは進めない場所の意で、
おたがいに強く惹かれながらも、
指がふれるかふれないかくらいの距離を行きつ戻りつ。
その先へは進めない女と男の心の機微が、
淡々と静かに描かれています。
久々に好きな作家に出会えて、満足。