夜は、はや、夏の終わりの匂い。
いつも歩く川縁の草むらには、虫の声。
吹く風もひんやりと心地よくて、つい歌が出る。
耳にウオークマンの英語学習はそっちのけで、
マイ・ブームは竹内まりあの「恋の嵐」。
調子っぱずれの♪ ダンス、ダンス、ダンス ♪ を
夜の闇が苦笑いしながら吸い込んでくれる。
故・向田邦子脚本のTVドラマ
「隣の女」の主題歌だった、この歌。
根津甚八が道を歩きながら、天津甘栗の皮をむき、
それを、並んで歩く桃井かおりの口にぽい、と入れてやるシーン。
クールな顔で、あんなことされたら、たまらないよなー、と
古いドラマを思い出しながら、
ひとり、歩く、オレンジ色の満月の夜。